【中小企業診断士】2次口述試験の内容と直前対策を徹底的に解説する

中小企業診断士試験のラスボスとも言える「2次口述試験」。7科目のマークシート式1次試験、4科目の論述式2次試験をパスした者だけに与えられる最後の舞台です。

口述試験は受験者の母数自体が少ないことに加え、参考書に記載されることも少ない謎のベールに包まれた試験ですが、今回は僕の実体験をもとにその内容と直前対策についてまとめていきたいと思います。

2次口述試験の概要

まず2次口述試験については、診断協会のHPに下記のような記載があります。

口述試験を受験する資格を得た方を対象に、中小企業の診断及び助言に関する能力について、筆記試験の事例などをもとに個人ごとに面接の方法により行います。なお、試験時間は、1人当たり約10分間で、筆記試験と同じ 7地区で実施します。

(中小企業診断協会HPより)

ここでの「口述試験を受験する資格を得た方」とは、2次の論述試験をパスした者という意味で、論述試験合格者には合格発表日に口述試験の受験票が発送されます。

そして、合格基準は「口述試験における評定が 60% 以上」とされています。

論述試験に加えて、口述試験でも60%以上の得点を獲得した者が晴れて中小企業診断士試験に合格と認められます。

逆に言うと、論述試験に合格していても、口述試験で不合格となった者は2次試験そのものが不合格となってしまいます。翌年もまた2次の論述試験からやり直しとなりますので、気合いを入れて臨みましょう。

口述試験の出題内容

口述試験では2次論述試験の事例Ⅰ~Ⅳの中から2つの事例がピックアップされ、各事例から2問ずつ計4問の出題がされます。

【事例Ⅰから出題の場合】

・A社は研究開発型企業ですが、研究開発型企業とはどのような企業のことか説明してください。

・A社は成果主義型の賃金制度を取り入れていますが、そのメリットとデメリットについて教えてください

【事例Ⅲから出題の場合】

・C社の強みと弱みについて教えてください。

・C社がリードタイムを短縮するためには、どんな取り組みが必要かを教えてください。

このような形で面接官から出題がされ、それに対して「1問あたり約2分」の時間で口頭で回答をしていく形になります。私の場合は、試験の最初に面接官から「1問あたり約2分でご回答ください」との指示がありました。

入室・受験番号の確認(2分)+設問×4問(2分×4)=約10分という計算です。

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面接官は部屋に2人おり、2:1での面接スタイルとなります。それぞれの面接官から2題ずつ出題されます。なお「面接」ではなく「口述」の試験ですので、就活の面接のように会話があるわけではなく、聞かれた質問に対してただ回答をするだけの試験です。自身の回答に対して、コメントやツッコミが入るわけではありません。(よほど的外れな回答をした場合は軌道修正が入ることもあるようですが。。。)

口述試験の合格率は?

中小企業診断協会から、毎年口述試験の合格率が発表されています。

ここ数年分の合格率をまとめた表がこちらです。

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ここ数年の合格率はほぼ99%以上をキープしており「落とすための試験ではない」ことは明らかです。ただし、H14年試験のように10人以上が不合格となった年度もあるので、今後もこの傾向が続くかどうかは不透明だと言えるでしょう。

じゃあ、誰が落ちるの?

不合格になった人がどんな事情だったのかを知ることはできませんが、口述試験に落ちるケースとしては下記のパターンがあるようです。

  1. 口述試験に欠席または遅刻した人
  2. 面接の場で何ひとつ答えられず沈黙してしまった人
  3. 「わかりません」を連発した人

これらの3つを避け、社会人として基本のマナーを持ってコミュニケーションができれば基本的には合格できる試験だと言えるでしょう。

ただしH14年試験では「デファクトスタンダードについて、実例を挙げて説明せよ」という質問が出たらしく、「デファクトスタンダード」の意味を忘れてしまい回答できなかった人が不合格にされてしまったと言われています。

知識系の問題が出て、まったく回答できなかった場合は不合格となってしまうケースもありますので、最後まで気を抜かずに対策していきましょう。

また、服装ですが普通のビジネススーツが無難です。ジーパンの人も会場には居ましたが、ほぼ全員がスーツなので間違いなく浮きます。変に目立つのではなく、無難な格好で臨みましょう。

必要な勉強時間

平成30年度試験の場合は、2次論述試験の合格発表日が12月7日(金)で、口述試験が12月16日(日)と合格発表~口述試験の間はわずか10日余りしかありません

なので、理想は2次試験終了後(10月末)から勉強をスタートするべきですが、手応えのない2次試験終了後から口述対策をするモチベーションも湧かないと思います。

もし論述試験合格発表~口述試験当日の10日間で勉強をする時間が取れるのであれば、勉強のスタートは発表後でも構わないと思います。多くの受験生も発表後から口述対策に取り組み始めるはずです。

ちなみに僕は口述対策前の1週間はたまたま会社からお休みをもらっていたので、四国まで一人旅に行っておりましたw

一応、夜に勉強はしていましたが、良い子はマネしないように!!

口述試験対策

それでは具体的な口述試験対策について解説していきます。

①事例Ⅰ~Ⅳの与件文読み込み

まずは各事例の与件文を丁寧に読み込み、大筋の内容を暗記しましょう。本番の試験では問題冊子やメモの持ち込みは一切禁止されているので、事例企業の特徴や変遷については頭に叩き込んでおく必要があります。

実際のコンサルティングの場面でも、顧客企業の基本情報を覚えておくのは当然ですよね。

各事例企業の概要、事業内容、変遷、社員数、社内制度、強み、弱み、市場の機会、脅威、課題、経営戦略、財務状況、競合状況などなど…あらゆる情報を間違いなく記憶しておきましょう。

僕は、与件文を暗唱したり、音読した音声データを聞きこんだり、与件文をひたすらWordにタイピングしたり、五感をフル活用して記憶していきました。

各事例企業について大体2時間ずつ、計8時間くらいはこの作業に要しました。

②二次試験問題の模範解答チェック

続いて、自身の再現答案と予備校の模範解答を見比べ、チェックを行いました。口述試験では、論述試験の設問がそのまま出題されるケースもあります。また自身の事例企業への解釈が大筋で合っていたのかどうかもきちんと確かめておきましょう。

その際、各予備校が出している解説動画を視聴するのがおすすめです。与件文の復習にもなり一石二鳥です。

③模擬面接への参加

模擬面接へは1回は必ず参加しておきましょう。口述試験は非常に特殊な試験であり、会場には独特の雰囲気があります。緊張感も尋常ではなく、緊張から頭が真っ白になってしまう人がいることも十分理解できます。

この緊張感に打ち勝つには、事前に場慣れのプロセスを踏んでおくことが重要です。各種の受験生支援機関や予備校が模擬面接セミナーを開催しているので、是非参加してみてください。またこの場では同期の合格者との繋がりも持てるのでオススメです。

④予想問題集の読み込みと回答練習

与件文の読み込みや模擬面接への参加が終われば、予備校が配布している予想問題集を入手して読み込みを行いましょう。僕はこれに加えて、自ら出題されそうな問題を作成して、その模範解答を作る練習もしていました。

予想問題集を活用する注意点ですが、一言一句、回答を暗記するような勉強法はオススメしません。本番で似たような質問が出た際、丸暗記したものを回答しようとするあまり、暗記内容が飛んでしまい混乱する可能性があります。

回答のエッセンスだけを叩き込んでおき、当日に自分の言葉で回答を組み立てましょう。

僕自身の口述試験体験談

2次論述試験合格後の心境

合格の喜びに浸るのは束の間で、合格していることを確認した後すぐに口述セミナーに申し込みしました。二次試験終了後は遊び呆けていたので、埃をかぶっていた問題用紙を引っ張り出してきました。もちろん発表までに一切口述対策をしていなかったので、事例企業の情報も完全に頭から抜けていました。

実際の勉強内容・勉強時間

上記の4つの対策を行いました。勉強時間は10日で計20時間ほどかと思います。しかしながら、勉強し始めると範囲は広く、キリがありません。ある程度の割り切りは必要かと思います。

2次試験前日の心境

否めない勉強不足感に、前日は相当ビビっておりました。なんだかんだで試験前日の土曜日は10時間くらい必死で詰め込んだ気がします。

2次試験当日

遅刻は絶対ダメ、ということで試験開始の2時間ほど前には会場近くのカフェに到着しました。

会場近くのカフェに入ると同業者が沢山いて、みんな二次試験の問題用紙を読み込んでいました。僕は周りの人が勉強しているのを見ると、自分の対策不足に焦ってしまうタイプなので、会場から遠いカフェにすればよかったー、と少し後悔w

実際に出題された問題

事例1と事例2からの出題でした。とにかく事例4だけは避けたかったのでラッキーでした。以下、記憶の範囲で入室からの会話を再現します。

僕「(入室)失礼します。」(ドア近くで一礼)

試験官①「荷物は横の机に置いて、そちらの椅子に掛けてください」

僕「失礼します。」(着席)

試験官①「お名前と生年月日を和暦でお願いします。」

僕「生年月日は、平成〇年×月△日、名前は××です。」

試験官①「それでは、これより、中小企業診断士試験の口述試験を始めます。二次試験の各事例から幾つか質問をいたします。あなたは中小企業診断士として回答してください。なお、各質問に対しては2分を目安に回答してください。それでは、試験を始めます。まずは、事例IのA社について質問いたします」

試験官①「A社は研究開発型企業ですが、A社が外部の研究機関や大学、他企業と連携して経営していくことのメリットを教えてください」

僕「それでは、研究開発型企業であるA社が外部の研究機関等と連携していくことのメリットについてお話します。まず、A社は社員の大半が中途採用で雇用したスキルのある研究者であり、研究開発力が高い企業と言えます。しかしながら、そうは言ってもA社は中小企業であり、A社単独での研究開発にはリソースの不足が否めません。そこで、他の研究機関や大学と共同研究などをすることで、①外部の研究設備や研究機関を利用することができるようになり、投資を抑制できる点、②外部との人材交流を図れることにより、従業員への刺激を与えることができ、高次学習を促せる点、などがメリットとして挙げられます。これらにより、更にA社は研究開発力を向上させることができると考えます。また、③A社は新卒採用を現在行っておりませんが、大学との協業をした場合、優秀な学生や研究室とのパイプも作ることができ、将来的に新卒採用を行う場合に有利になります。以上、3点がメリットと言えます。」

試験官①「はい、それでは次の質問に移ります」

「A社のように創業者が社長であることのデメリットについて教えてください」

僕「はい、それでは、創業者が社長であることのデメリットについてお話いたします。まずは少しだけ、創業者が社長であることのメリットをお話ししますと…」

(ここで、試験官が苦笑したのが目に入り、メリットの話は縮めることに)

僕「強いリーダーシップを持って会社を引っ張ることができるというメリットがあるのは事実ですが、デメリットも幾つかあります。まずは、後継者が育ちにくい点です。A社は創業以来、社長がリーダーシップを発揮してきましたが、社長の年齢を考えるともう60~70代であり、そろそろ承継が必要な時期だと考えられます。しかしながら、A社の現状を見ると依然、事業はA社長のリーダーシップに委ねられている状況で非常に危険な状態だと言えるでしょう。近年は組織体制を変更し、権限移譲が少しは進んでるとは考えられますが、今後は将来の経営者育成が急務だと考えられます。以上より、創業者が社長であることのデメリットは、後継者の育成問題にあります。以上です。」

(少し短かったか…?と思うも、メリットの説明も入れて時間稼ぎしたところから、次の事例に移る)

試験官②「それではここからは、私から事例2について質問させていただきます。」

「長年旅館業を営んでいるB社の設備的な強みについて教えてください」

僕「B社の設備面での強みについてお話します。まずはB社は古いながらも、非常に歴史のある建物や内装を持っており、和の風情のある苔むした庭園や、滞在した芸術家の作った美術品が配置された趣ある廊下など、和の香りと文化を感じられる施設であるということが強みの1つです。近年ではこうした和の香りに魅せられたインバウンド客の宿泊が増えるなど、SNS映え需要にも後押しされ、人気を博しています。また最近では、日本風の食器で提供する朝食サービスなども人気となっており、強みの一つと言えます。また、立地もX市の中心部に位置しており、観光エリアやビジネス街にも徒歩で行けることも強みだと考えられます。以上です。」

(「設備的な」という制約条件が良く分からず、とりあえず沢山上げておいたがツッコミは特になし)

「B社が昔馴染みのビジネス客をリピーターにするための施策について教えてください」

(H30年の事例2では、インバウンド客対応がB社の取るべき戦略だったので、既存客のリピーター化については全く考えておらず、一瞬焦る…、がとりあえず話し始めてみた)

僕「それでは、B社が昔馴染みのビジネス客をリピーターにする施策についてお話します。まずはB社は過去の馴染みのビジネス客の顧客情報をデータベース管理していると考えられますので、この顧客情報を効率的に活用して、DM送付を行います。その際、リピート利用で割引となるクーポン券の添付や、最近始めた和朝食の情報発信などを行うことで、リピーターを獲得していきます。また、近年のビジネスマンはSNSなども利用していると考えられますので、SNSアカウントを作成し、リツイートやシェア、口コミ投稿をすれば割引になるようなキャンペーンを展開するのも良いかと思います。以上です。」

試験官②「(時計を見て)それでは、以上で口述試験は終了となります。お疲れさまでした」

僕「ありがとうございました。(退室)」

感想

とりあえずは、沈黙とかツッコミもなく、無事終えられたのでスッキリと会場を出ることができました。

回答が短いと追加で5問目、6問目が出題されてしまうと聞いていたので、できる限りゆっくり長めに話すことで2分程度で回答することができ、4問で試験を終わらせることができて良かったです。

口述試験でのテクニック

それでは最後に口述試験でのテクニックをいくつか紹介しておきます。

①見た目を整える

「人は見た目が9割」というのは、あながち嘘ではありません。試験当日は無難にスーツを着こなし、清潔感ある格好を心がけましょう。僕は試験前日に散髪にも行き、万全の態勢で試験に臨みました。

②面接官の質問を繰り返す

回答の際は、まず最初に面接官の質問を繰り返すようにしましょう。こうすることで、①回答を考える時間稼ぎとなり、②回答そのものの時間を長くすることができ、追加質問のリスクを減らすことができます

③ゆっくり話す

実際に計ってみるとわかりますが、回答時間の「2分」って非常に長いです。なので、できる限りゆっくり話したり、例を挙げて話したりと2分程度で話せるように工夫するようにしましょう。

面接官も60代くらいのおじいちゃんであるケースが多いので、ゆっくり話すに越したことはないでしょう。

もちろん、設問要求とあまりにも違う話をしたり、冗長な話をするのは論外ですので、気を付けるように!

④接続詞を使うことを意識する

話をする際に、接続詞を使って話すことを意識しましょう。

  • つまり、・・・(結論のまとめ)
  • 例えば、・・・(例を出す際)
  • 加えて、・・・(追加の要素が思いついた場合)
  • 結論を申し上げると、・・・(話がぐちゃぐちゃになったとき)
  • 最後に、・・・(最後に時間が足りない際に活用)

接続詞を活用するだけで、聞き手側も話の理解がしやすくなりますし、話を組み立てやすくなるメリットもあります。

⑤分からないときは沈黙だけは避ける

最後に、沈黙だけは絶対に避けましょう!回答が思い浮かばない場合でも、なにかしらの話をするようにしましょう。無言で沈黙するのは、答案を白紙提出するのと同じなので、間違いなく不合格になってしまいます。

口述試験は落とすための試験ではありませんので、必死に何か話そうとしていると、試験官の方も、「○○の視点ではどうでしょう?」といった助け舟を出してくれるはずです。

まとめ

本日は謎のベールに包まれた口述試験について解説しました。 きちんと対策さえしておけば間違いなく合格できる試験ですので、気を抜かずに取り組みましょう!