「人生、思い通りに行かないもんだなあ」
そう思ったのが、3年前の4月のこと。
厳しい就職活動を乗り越えて、僕が入社したのは世界中に展開する大企業。就活生が好きな「グローバル」なんて言葉を振り回して、僕は内定の2文字を手に入れた。
東京の綺麗なオフィスで、ピシッとスーツを着て、海外を相手に格好良く仕事をする。そんな将来を夢見て入社式を迎えた。
だから、入社式で手渡された辞令に書いてあった言葉は、何かの間違いなんじゃないかって思った。
「勤務地 青森県」
何度も何度も読み返したけど、書いてあるのは青森という文字。僕はたった1人で青森県に住むことになった。
初めて青森に着いた晩のことは今でも鮮明に覚えていて、駅前の居酒屋で1人、地酒と郷土料理を食べながらこれからの生活に不安を感じていた。寒くなり始めた秋風は身体に染みて、孤独感をより強く感じさせた。
正直言って悔しかった。
東京にいる同期が楽しく飲み会をしている間に、僕は降り止まない吹雪の中で1人雪かきをしていたし、彼らが欧州向けのマーケティング戦略を練っている間に、僕は泥臭く現場に出て仕事をした。
なんで俺はこんな所にいるんだ?
なんのために俺はこの会社に入社したんだ?
何度も何度もそう思ったし、1人お酒を飲みながら落ち込む夜も何度もあった。
でも、住めば都って言葉は本当で、半年も経てば寂しさとか気候の厳しさには慣れることができた。そして1人、また1人と親しい友人も出来て、こっちでの生活が楽しくなった。
大自然の中でスノーボードを満喫したり、バーベキューをしたり、ドライブに行ったり、温泉に入ったり、地方でしかできないことを目一杯に楽しんだ。マラソンやジム通いも始めて、健康的な生活が送れるようになった。
仕事も頑張った。たった数年では大きな結果を出すことはできなかったけど、悔しかったからこそ、帰った時は誰にも負けないくらい仕事ができる人間になろうと思って、精一杯打ち込んだ。
そして、最初は嫌だった青森が大好きな土地に変わった。
色んな人が青森のことを田舎だとか雪国だとか悪く言うけれど、僕は自信を持って青森の良さを何時間でも語ることができる。
そんな3年間を乗り越えて、ようやく東京での仕事がスタートする。
僕が地方転勤で得たもの。
それは「転んでもタダじゃ起きない精神」なのかもしれない。
悔しいからこそ、寂しいからこそ、それを打ち消すために目の前の仕事や人間関係に向かい合ってきたし、だからこそ楽しく充実した生活を送ることができた。
人間万事塞翁が馬。人生においては「なんでこんな結果になったんだろう」と落ち込む事態があっても、実はそれが良い結果を招くことも多いものだ。僕の地方転勤もそうだった。
これから先もどんな人生が待ち受けているかは分からない。
けど青森で1人頑張ってきた数年間を胸に、これからも「自分が置かれた場所でどう咲くか」「配られたカードでどう勝負するか」を考えながら生きていきたい。
自分への戒めと備忘録として。